2015年06月20日

タイタニア完結? そりゃ読まずにはいられませんよ!

3巻が出版されてからどれくらいの時間が経過したのだろうか。
田中芳樹の長編小説タイタニアが今年ようやく完結したと聞き、4巻と5巻(最終巻)をまとめて一気に読んでみた。




いったい何年ぶりだろう。
思えば田中芳樹の銀河英雄伝説に出会ったのが中学生の頃。
徳間ノベルズから出版されていた原作はもちろんのこと、アニメ、ゲームなど様々なメディアで展開されたその世界観と男心をくすぐるストーリーへ夢中になったものだった。

タイタニアを最初に読んだのがいつだったかよく思い出せないが、おそらく高校生の頃ではないかと思う。
実際手元にある3巻の巻末を見ると「1991年初刷」とある。
改めて考えれば、ずいぶん長い間中断しているものだと、今更ながら実感してしまった。

いつ出るのか、まだ出ないのかと思いながら、いつしか「もう出ないのかな」とあきらめてしまっていたのだが、2013年にいきなりの新刊出版、そして今年に入って完結である。
ファンとしては妙にテンションが上がってしまうのも仕方ないだろう。

近くの書店に行ってもタイタニアどころか銀英伝すら棚にないので(最近の書店は漫画の占める割合が以前にもまして大きくなっているような気がする。新書はおろか文庫本ですら棚が削られているように思えるのだが、まあ、それは別の話だ)、仕方なくamazonで購入することに。

ネタバレが怖いので読む前にレビューを見るつもりはないのだが、そうは言っても目に入る評価の星。
あれ? 評価低いぞ?

titania.gif


不安を感じながらも注文。
いくら評価が低くても、ファンとして読まないという選択肢はない。

翌々日に商品到着。さっそく週末一気に読んでみた。

結果……。

微妙。



とりあえず、完結したというのはまず嬉しい。どんな素晴らしい作品も未完のままでは読者側だってスッキリしない。
ただ、期待値が高すぎたのだろうか?
コレジャナイ感が正直ハンパではない。


銀河英雄伝説やタイタニアの3巻までで見た憶えのない言葉がやたらと多用されていたり、アマチュアのネット小説でみられるような表現がところどころあったりと、気になる点がいくつもある。

場面展開が不自然で唐突なため、読んでいて困惑することもしばしば。
単に私の読解力不足と言われればそれまでだが、少なくとも以前はすんなりと物語の世界に没頭できていたのだ。
いくらなんでも中学生のころよりも読解力が落ちているとは思えない。

その場に居ると思っていた人物がいつの間にか居なくなっていたりと、書くべき描写がところどころ抜け落ちている気がした。

細かいところを言えば、言葉の使い方が「覚えたての言葉を使いたがる中学生」のように無理やり感にあふれている。
昔は銀英伝を読みながら、作中で使われている言葉や表現にずいぶん勉強させてもらったものだ。
言葉を知らない中学生でも、すんなりと受け止められるようにその使い方は自然なものだったように思う。
ところがタイタニア4、5巻ではそのあたりがどうもしっくりこない。
違和感だけが強く残ってしまった。

自分が歳を取ったからなのかとも思ったが、改めて1巻から3巻を読んでみるとやはり今でも引き込まれる。
参考と比較のためにページを開いたが最後、内容は知っているはずなのについつい最後まで読み進めてしまうのだ。
だからタイタニアの4巻5巻に違和感を持った原因は、おそらく読み手である自分の変化によるものだけではないと思う。


もっとも残念だったのがストーリー面だろうか。
展開としては特別変なものではない。
似たような展開の作品も探せばきっといくつか見つかるだろう。

ただ、「タイタニア」という小説でこの展開は予想外だった。
田中芳樹以外の作家が書いた作品であれば「そういう作風の人なんだろう」で済んでいたが、あの銀河英雄伝説で壮大かつ雄大な物語を綴った作家がまさかああいう展開とオチを持ってくるとは思いもしなかった。

アイスコーヒーだと思って飲んだら、炭酸の抜けたコーラだったという心境だ。

無双する巨大○○なんてラノベ的な存在には白けたし、真相は結局○○の○○だったとか拍子抜けである。
「田中芳樹のスペースオペラってそういう作風じゃなかったでしょ!?」と、叫びたくなる。
他にも主役級であったはずのファン・ヒューリックは4巻以降脇役なみの存在感しか無く、仲間のワレンコフに至っては終盤の描写を読んで、「あれ? そういえばそういうキャラいたっけ」レベルの存在感だ。



結局のところ、この作品は予想を悪い意味で裏切ってくれた。

おそらく当初のプロットはもっと違うものだったのではないかと思う。
3巻までを読む限り最終巻は少なくとも8巻程度、たぶん本来は10巻前後を予定していたのだと推測する。
3巻まではそれを感じさせるだけの伏線や設定がちりばめられていたし、話の流れとしても5巻で完結するような書き方ではなかった。
だからなおさら、とりあえず完結するために無理やり着地させた感じが否めない。

終わってみれば、つまるところ大企業の社内派閥抗争と何ら変わりなく、3巻までの展開で感じさせてくれた広がりと重厚感を期待させる物語はどこかへ迷子になってしまったらしい。



そりゃ確かに20年以上も経っていれば、作家の作風だって変わって当然だろう。
問題なのはその方向性がおそらくファンが望んでいなかったであろう「ライト」で「ポップ」なところへ向いていた点じゃないだろうか。

ライトノベルやネット小説を読んでいて感じる、「あー、こういう書き方がまかり通ってるから、読書家に『ラノベは小説じゃ無い』とか『低俗』とか言われるんだよなあ」という残念な印象を、まさかタイタニアで感じることになるとは思ってもいなかった。



不満は確かに山ほどある。だがそれでも完結まで書き続けてくれたことには素直に作者へ感謝したい。
未完のまま放置された作品のファンほど悲しいものはないからだ。

しかし正直なところ、まだタイタニアを読んだことがない人へ自信をもってお勧めできる作品ではなくなってしまった。

これからタイタニアを読み始めようと思っているそこのあなた。やめとけ。

だがタイタニアのファンであるそこのあなた。あなたは迷わず買って読んどけ。
正直物語としては残念な内容だが、それでも読まずにはいられないのがファンというものだろう。
というかファンだったらとっくに買って読んでると思うが……。

そしてじっくりとその身をもって味わうのだ。
もはや古き良き時代は戻ってこないのだと。
読者を魅了してやまなかった作家「田中芳樹」はもういないのだと。

いっそのこと3巻までと4巻以降は別の作家が書いたものだと思えば、その乖離もすんなりと受け入れられるのかもしれない。
ま、ただの現実逃避だけど。

posted by ダメ人間 at 17:20 | 小説・ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月10日

KAGEROU

ちょっと友人と食事をする約束をして、待ち合わせの時間まで時間つぶしをするために近くのBOOK・OFFに入りました。
何気なく棚を見ていると、ずいぶん前に話題になった水嶋ヒロ著の「KAGEROU」が105円のワゴンセールに入っていたんです。
「そういえば読んでないなぁ」と思い、105円だったらいいか。ってことで買っちゃいました。




文字数もページ数も少ないので、1時間ほどで読了しました。
読み終えた感想としては、
『水嶋ヒロがんばった』
ってところでしょうか。

芸能人が本を書く時ってゴーストライター使うもんなのかもしれませんが、このKAGEROUは間違いなく水嶋ヒロ本人が書いたのでしょう。
ゴーストライターが書いてこの出来だったらまずいです。

初めて書いた小説ということでいろいろ課題はありますが、しっかりと自力でがんばって書き上げたというのは伝わってきます。
自分の中にある思いを形にして何とか読者に伝えたいという努力も読み取れます。
ですが、いかんせん実力が伴っていません。
登場人物に奥行きがなくて薄っぺらいし、序盤から半分までが背景説明に終始して物語が動かない。
情景描写や文章表現にも特に惹かれるものはない。
とはいえ、そういった課題も処女作ですから仕方ないのかもしれません。
書いた以上は文学賞に応募したくなるのも人の性でしょう。

命の大切さを説くというテーマにしてもどこかで聞いたような話ばかりで、「うん。そうだね。そのとおりだよ。だから何?」という感じです。
小学生ぐらいならこの本を読んで命の大切さについて考えさせられるかもしれませんが、大人が読むほどの内容ではありません。
もともと児童書の分野に強いポプラ社ですから、漢字全てに読み仮名をつけて内容も小学生向けに編集し直せば『図書係のおすすめ』のような本にはなり得るかもです。
大賞とか関係なく、普通に水嶋ヒロ名義で出版してれば良かったのに。

正直なところ水嶋ヒロ本人に対しては特に思うところも無く、逆に『今後も作家業を本気でやりつづける意思が本当にあるなら』応援したいとまで思います。(「映画の脚本にするために小説書いた」とかぬかしやがったり、本作以降に全く文筆活動をしないとなると遠慮なく叩きますが)


問題はこの作品を大賞に選んだポプラ社の方です。
第五回ポプラ社小説大賞には1200を超える作品が応募されたらしいですね。
確かに他の応募作品を読んだわけではありませんが、少なくとも1200もの作品が集まっていながらコレ(KAGEROU)よりも優れた作品が無かったとか…、いくらなんでも無理があるでしょう。

ネット上で個人が公開している趣味の小説でも、これよりしっかりした出来のものはあります。

出来レース出来レースって言われてるけど、確かに出来レースじゃ無かったら審査員の能力を疑うレベルです。
本気で選考してこの結果だったら、選考に携わった人間は今後いっさい小説に関わる仕事をするべきじゃないでしょう。

最初から出来レースだとすると、あまりにも対応が稚拙です。
一連の動きが全て『本の部数を伸ばすため、売るため』の宣伝行為にしか見えません。
確かにこういった出来レースというのはいろんな分野であると思いますが、それにしたって一見出来レースに見えないカモフラージュぐらいはするでしょう。
ここまであからさまな出来レースも珍しいのでは無いでしょうか。


この件では確かにポプラ社の売上も大きく伸びたでしょう。
KAGEROUも売れたでしょう。
他の受賞作も話題性のおかげで売れたことでしょう。

ですが、
もし出来レースで無ければ、ポプラ社には出版社としての能力が不足しています。
もし出来レースなら、ポプラ社には出版社としてのプライドや自負がありません。

いずれにしても、ポプラ社はKAGEROU効果で得た売上以上に「信用」や「評判」というお金では得がたいものを失ったのではないでしょうか。

また世間一般に「やっぱり出来レースってあるんだな」「出版社も売上のためなら不道徳なことをやるんだね」というイメージを植え付けてしまったことは疑いようがありません。
そういう意味でポプラ社の罪はとても重い。


で、このKAGEROUが受賞したポプラ社小説大賞はこの回で終了。
翌年(つまり2011年)からは賞金を10分の1に減らしてポプラ社小説新人賞に変わったようです。
KAGEROUの影で落選してしまった小説の作者はKAGEROUを読んでどう思うんでしょうね?
私だったら「二度とポプラ社の文芸賞には応募しねぇ!」ってなると思うんですが。
調べてみると、780通の応募があったって…。 えぇ〜!?

……どうやら応募する方にもプライドは無かったみたいです。


まぁ正直なところはわかりませんけどね。
第五回ポプラ社小説大賞で落選した人が、そのまま翌年にポプラ社小説新人賞に応募しているのかどうかなんてわかりませんし。
もしかしたら「KAGEROUすげぇ! これに負けたんなら納得だわ。次は俺もがんばろう」って思った人が多かったのかもしれませんし。
逆にKAGEROU読んで「こんなんで2000万の大賞受賞できるんなら、俺(私)にもチャンスあるんじゃね?」ってにわか小説家が増えたのかもしれませんし。


ただ少なくとも私は今後30年間、ポプラ社の賞は全く信用しないことにします。

って、105円ぽっちしか払っていない私がえらそうに言ってもね〜w

posted by ダメ人間 at 21:57 | 小説・ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月02日

ライトジーンの遺産

ライトジーンの遺産 (ハヤカワ文庫JA) [文庫] / 神林 長平 (著); 早川書房 (刊)

■タイトル
ライトジーンの遺産(ライトジーンのいさん)

■著者
神林長平(かんばやしちょうへい)

■あらすじ
原因不明の臓器崩壊という全人類危機と、崩壊する臓器の代替手段としての人工臓器が当たり前となった未来。
超常的な能力を持つ「サイファ」であり、人工的に作られた人間でもある主人公の「菊月虹(キクヅキコウ)」が臓器崩壊に翻弄される人々と人工臓器にまつわる様々な事件に巻き込まれていく。

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SFにありがちな臓器崩壊や超能力といったテーマを扱いながらも、あくまでも焦点が当てられているのは臓器崩壊にかかわる事件とそれを取り巻く人間模様です。
人工臓器メーカーの不正とそれを許せない新人刑事の義憤、親子の愛憎、陰謀に巻き込まれた弱者の悲哀、死にたいのに死ねない男の苦悩といった物語がハードボイルドタッチで綴られていきます。
舞台はSFになっていますが、発生する事件や人間模様は現代の社会問題を鋭く突いていて、読み応えたっぷりの内容です。
全7話のオムニバス形式になっているので1話分を読むのにさほど時間はかかりませんが、休みの日などに長い時間をかけて一気に読み終えれば心地よい読後感に浸れます。

posted by ダメ人間 at 23:26 | 小説・ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月14日

とある魔術の禁書目録2


とある魔術の禁書目録(インデックス)〈2〉 (電撃文庫)

とある魔術の禁書目録(インデックス)〈2〉 (電撃文庫)

  • 作者: 鎌池 和馬
  • 出版社/メーカー: メディアワークス
  • 発売日: 2004/06
  • メディア: 文庫




■タイトル
とある魔術の禁書目録2(とあるまじゅつのインデックス2)

■著者
鎌池和馬(かまちかずま)

■あらすじ
今度の敵は錬金術師。
科学宗教と化した進学塾に囚われた巫女を救うため、かつては敵として対峙した炎の魔術師ステイルと共に乗り込む上条。
錬金術の究極を修め、考えるだけで世界の法則を操る敵を相手に、巫女を救うため上条は右手一本で立ち向かう。

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作者のあとがきを読むと「今回のコンセプトはバッドエンド」らしいのですが、第一巻のエンドも見方によっては充分バッドエンドだと思ってしまうのは気にしちゃダメなんでしょうね。

物語全体のヒロインであるシスターに対して今巻のヒロインは『巫女』ですよ、奥さん。
東西「神の伴侶」対決ですか?これ。
にしては巫女さんの印象薄すぎます。
後の巻でも出ては来るのですが、いまいち扱いが・・・。
ある意味、主人公の上条以上に不幸なキャラです。


で、いつものあのセリフもちゃんと終盤に出てきますよ。

いいぜ、アウレオルス=イザード。テメェが何でも自分の思い通りにできるってなら―――――

―――――まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す・・・・・・ッ!


ぶち殺すって・・・、あんたも結構物騒なこと言ってますネ。上条さん。


それはそうと、ビリビリ娘は今回出番なしですか?残念・・・。
posted by ダメ人間 at 17:00 | 小説・ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月28日

ブギーポップは笑わない


ブギーポップは笑わない (電撃文庫 (0231))

ブギーポップは笑わない (電撃文庫 (0231))

  • 作者: 上遠野 浩平
  • 出版社/メーカー: メディアワークス
  • 発売日: 1999/06
  • メディア: 文庫



■タイトル
ブギーポップは笑わない(ぶぎーぽっぷはわらわない)

■著者
上遠野浩平(かどのこうへい)

■あらすじ
平凡な学園生活の裏側で繰り広げられる奇妙な事件。
それはとある研究所から逃げ出した「マンティコア」と呼ばれる魔物によって引き起こされる"世界の危機"だった。
その危機を救うべく、ごく普通の女子高生「宮下藤花」の意識下から浮かび上がってきた「ブギーポップ」。
県立深陽学園の学生を巻き込んで静かに繰り広げられる戦いの果てに訪れる結末は・・・。

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各章ごとに複数の登場人物の視点で入れ替わり立ち替わり、最後まで読み進めるに従って頭の中に引っかかったトゲがすっと抜けていくような感じです。
推理物というわけではないんですが、ひとつの事件を多方向から描くことで物語の背景をより深く描写してくれます。
手法としては昔からある物なんでしょうけど、完読後はそれまでもやもやとしていた物がすっきりとした感じで悪くありません。
一度読み終わった後に、再び最初から読みたくなってしまいますし、改めて読んでみると最初に読んだときには気付かなかったこともあって、再読なのに新鮮な気分が味わえます。
派手な描写やアクション要素も無いし、最後もいまいちスッキリしない(と感じました)終わり方ですが、ミステリー的なお話が好きな方には一読をお薦めします。
posted by ダメ人間 at 19:00 | 小説・ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする